はじめてのBlenderアドオン開発

Last Update: 2023.3.1

Blender 2.7

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2-8. BlenderのUIを制御する①

BlenderのUIを自由に変えたいと思ったことはありませんか? 実はBlenderのUIの大半はPythonで記載されているため、Pythonを理解できていればある程度自由にBlenderのUIを変更することができます。 本節は、アドオンの開発はしないけど自分の好みのUIへ改造したい、という方にも参考になると思います。

BlenderのUIはPythonで制御できる

BlenderのUIを変更するためには大変な労力が必要だと思っている方が多いのではないでしょうか。 しかし BlenderのUIの大半はPythonのソースコードで書かれていますし、本書をここまで読まれた方であれば、UIを制御するための基本的な知識が身についているはずです。 BlenderのUIがPythonのソースコードで書かれていることを確認するために、[3Dビュー] エリアのメニューを変更してみましょう。

以下の手順で、[3Dビュー] エリアのメニューを制御するソースコードを修正します。

1 [3Dビュー] エリアのメニューにある、[現在の視点をOpenGLレンダリング] ボタンにマウスカーソルを置いて [右クリック] します。
2 [ソース編集] をクリックします。
3 [テキストエディター] エリアにソースコードが表示されます。また、[現在の視点をOpenGLレンダリング] ボタンを表示するためのコードにカーソルが自動的に移動しています。
4 カーソルが示している行をコメントアウトします。
5 [テキストエディター] エリアのメニュー [テキスト] > [保存] を実行し、上書き保存します。
6 1-4節 で紹介した『Reload Scripts』機能を用いてアップデートすると、[3Dビュー] エリアのメニューから [現在の視点をOpenGLレンダリング] ボタンが消えます。

元の [3Dビュー] エリアのメニューに戻すためには、先ほどコメントアウトした行のコメントを外して保存し、『Reload Scripts』機能でアップデートすることで元に戻すことができます。

ここまでの説明で、BlenderのUIはPythonで制御されていることが理解できたのではないでしょうか。以降の説明では、BlenderのUIをPythonから構築する時に知っておくと良いことなどをサンプルを用いて説明します。

作成するアドオンの仕様

アドオンを作成する

1-5節 を参考にして以下のソースコードを入力し、ファイル名を sample_2_8.py として保存してください。

import bpy


bl_info = {
    "name": "サンプル2-8: BlenderのUIを制御するアドオン1",
    "author": "Nutti",
    "version": (2, 0),
    "blender": (2, 75, 0),
    "location": "3Dビュー > ツールシェルフ",
    "description": "BlenderのUIを制御するアドオン",
    "warning": "",
    "support": "TESTING",
    "wiki_url": "",
    "tracker_url": "",
    "category": "User Interface"
}


class NullOperation(bpy.types.Operator):

    bl_idname = "object.null_operation"
    bl_label = "NOP"
    bl_description = "何もしない"
    bl_options = {'REGISTER', 'UNDO'}

    def execute(self, context):
        return {'FINISHED'}


# ツールシェルフに「カスタムメニュー」タブを追加
class VIEW3D_PT_CustomMenu(bpy.types.Panel):

    bl_label = "カスタムメニュー"          # タブに表示される文字列
    bl_space_type = 'VIEW_3D'           # メニューを表示するエリア
    bl_region_type = 'TOOLS'            # メニューを表示するリージョン
    bl_category = "カスタムメニュー"       # タブを開いたメニューのヘッダーに表示される文字列
    bl_context = "objectmode"           # パネルを表示するコンテキスト

    # 本クラスの処理が実行可能かを判定する
    @classmethod
    def poll(cls, context):
        # オブジェクトが選択されている時のみメニューを表示させる
        for o in bpy.data.objects:
            if o.select:
                return True
        return False

    # ヘッダーのカスタマイズ
    def draw_header(self, context):
        layout = self.layout
        layout.label(text="", icon='PLUGIN')

    # メニューの描画処理
    def draw(self, context):
        pass


def menu_fn_1(self, context):
    self.layout.separator()
    self.layout.operator(NullOperation.bl_idname, text="項目 1", icon='PLUGIN')


def menu_fn_2(self, context):
    self.layout.operator(NullOperation.bl_idname, text="項目 2", icon='PLUGIN')
    self.layout.separator()


def register():
    bpy.utils.register_module(__name__)
    # 項目をメニューの先頭に追加
    bpy.types.VIEW3D_MT_object.append(menu_fn_1)
    # 項目をメニューの末尾に追加
    bpy.types.VIEW3D_MT_object.prepend(menu_fn_2)
    print("サンプル2-8: アドオン「サンプル2-8」が有効化されました。")


def unregister():
    bpy.types.VIEW3D_MT_object.remove(menu_fn_2)
    bpy.types.VIEW3D_MT_object.remove(menu_fn_1)
    bpy.utils.unregister_module(__name__)
    print("サンプル2-8: アドオン「サンプル2-8」が無効化されました。")


if __name__ == "__main__":
    register()

アドオンを使用する

アドオンを有効化する

1-5節 を参考に作成したアドオンを有効化すると、コンソールウィンドウに以下の文字列が出力されます。

サンプル2-8: アドオン「サンプル2-8」が有効化されました。

さらに、[3Dビュー] エリアの [ツール・シェルフ] にタブ [カスタムメニュー] が追加されます。 タブは [オブジェクトモード] 時かつオブジェクトが1つでも選択されている時のみ表示されることに注意が必要です。 [エディットモード]、または [オブジェクトモード] でもオブジェクトが1つも選択されていない場合は、タブが表示されません。

また、[3Dビュー] エリアのメニュー [オブジェクト] の先頭に [項目1]、末尾に [項目2] が追加されます。

アドオンの機能を使用する

[3Dビュー] エリアの [ツール・シェルフ] のタブ [カスタムメニュー] をクリックすると、カスタムメニューのメニューが表示されます。

アドオンを無効化する

1-5節 を参考に有効化したアドオンを無効化すると、コンソールウィンドウに以下の文字列が出力されます。

サンプル2-8: アドオン「サンプル2-8」が無効化されました。

ソースコードの解説

ツール・シェルフのタブを追加する

本節のサンプルでは、ツール・シェルフにタブを追加しています。 アドオンの機能をタブとしてまとめることで、ユーザはアドオンがどのような機能を持っているかを一目でわかるようになります。 また普段よく使う機能をタブにまとめ、独自のUIを構築してBlenderの利便性を高めるのも良いかもしれません。

ツール・シェルフのタブに追加するためには、以下に示すような bpy.types.Panel クラスを継承した パネルクラスを作成する 必要があります。

# ツールシェルフに「カスタムメニュー」タブを追加
class VIEW3D_PT_CustomMenu(bpy.types.Panel):

    bl_label = "カスタムメニュー"          # タブに表示される文字列
    bl_space_type = 'VIEW_3D'           # メニューを表示するエリア
    bl_region_type = 'TOOLS'            # メニューを表示するリージョン
    bl_category = "カスタムメニュー"       # タブを開いたメニューのヘッダーに表示される文字列
    bl_context = "objectmode"           # パネルを表示するコンテキスト

本節のサンプルでは、bpy.types.Panel クラスを継承した VIEW3D_PT_CustomMenu クラスを作成しています。 クラス名は基本的に自由につけることができますが、Blender本体では <エリア名>_<タイプ>_<クラスを表す適切な名前> と命名されていることが多いようですので、本節のサンプルではそれに合わせてみました。 ここで <タイプ> には、継承する型に応じて以下のような文字列が入ります。

文字列
MT bpy.types.Menu
PT bpy.types.Panel

クラス VIEW3D_PT_CustomMenu には、4つのクラス変数が定義されています。

クラス変数 値の意味
bl_category パネルに登録時にタイトルとして表示される文字列
ツール・シェルフに登録する場合はタブに表示される文字列となる
bl_space_type 登録先のエリア
bl_region_type 登録先のリージョン
bl_label ツール・シェルフのタブを開いたときに表示されるメニューのヘッダーに表示される文字列

bl_label には、ツール・シェルフのタブに表示される文字列を指定します。 クラス変数 bl_space_type には登録先のエリアを指定します。 本節のサンプルでは、[3Dビュー] エリアに登録することを考えて VIEW_3D を指定しています。

他にもクラス変数 bl_space_type には、Blenderのエリアに対応した以下のような値を指定することができます。

設定値 エリア
VIEW_3D 3Dビュー
TIME_LINE タイムライン
GRAPH_EDITOR グラフエディター
DOPESHEET_EDITOR ドープシート
NLA_EDITOR NLAエディター
IMAGE_EDITOR UV/画像エディター
SEQUENCE_EDITOR ビデオシーケンスエディター
CLIP_EDITOR 動画クリップエディター
TEXT_EDITOR テキストエディター
NODE_EDITOR ノードエディター
LOGIC_EDITOR ロジックエディター
PROPERTIES プロパティ
OUTLINER アウトライナー
USER_PREFERENCES ユーザ設定
INFO 情報
FILE_BROWSER ファイルブラウザー
CONSOLE Pythonコンソール

クラス変数 bl_region_type には登録先のリージョンを指定します。 本節のサンプルではツール・シェルフに登録するため、TOOLS を指定しています。

クラス変数 bl_region_type には、他にも以下のような値を設定することが可能です。

設定値 値の意味
UI プロパティパネル([N] キーを押したときにエリアの右側に表示される領域)
TOOLS ツール・シェルフ([T] キーを押したときにエリアの左側に表示される上側部分の領域)
TOOL_PROPS ツール・シェルフのプロパティ([T] キーを押したときにエリアの左側に表示される下側部分の領域)
WINDOW ウィンドウ(エリア中央の領域で常に表示される)
HEADER ヘッダ(エリア上部または下部に表示されるバーで常に表示されている)

VIEW3D_PT_CustomMenu クラスには、poll メソッド、draw_header メソッド、draw メソッドが定義されています。 各メソッドの処理を以下に示します。定義したメソッドの詳細については後ほど説明します。

メソッド 処理
poll 本メソッドが定義されたクラスの処理が実行可能な状態にあるかを判定するメソッド
True を返すと実行可能と判断し、False を返すと実行不可能であると判断する
実行不可能と判断されると、本メソッドが定義されたクラスで定義したいかなる処理も無効化される
draw_header ヘッダーを描画するメソッド
draw メニューを描画するメソッド
本メソッドでは、ヘッダー部のUIを変更することはできない

タブが表示される条件を設定する

本節のサンプルでは、[オブジェクトモード] 時かつオブジェクトが選択されている時のみタブが表示される仕様としていました。 特定の状況下でのみメニューを表示したり、処理を実行させるようにしたりするためには poll メソッドとクラス変数 bl_context 活用します。

bl_context はパネルクラス時に指定することが可能なクラス変数で、指定したコンテキストである時のみパネルの描画処理を実行します。 bl_context には以下のような値を設定することができます。

説明
objectmode オブジェクトモード時のみ描画する
mesh_edit エディットモード時のみ描画する

本節のサンプルではタブをオブジェクトモード時のみ描画するため、bl_context = "objectmode" としています。

また、poll メソッドでは、オブジェクトが選択されている時にのみ描画する処理を追加しています。

# 本クラスの処理が実行可能かを判定する
@classmethod
def poll(cls, context):
    # オブジェクトが選択されている時のみメニューを表示させる
    for o in bpy.data.objects:
        if o.select:
            return True
    return False

poll メソッドはクラス単位の処理となるため、クラスメソッドとして定義する必要があります。 このため、メソッドの前にデコレータ @classmethod をつける必要があります。

poll メソッドに渡されてくる引数は以下の通りです。

引数
cls bpy.types.RNAMeta
context bpy_types.Context

poll メソッド内では bpy.data.objects によりオブジェクトを全て取得し、選択されているオブジェクトが存在する場合は True を返しています。 この処理により、選択されているオブジェクトが1つでもあればタブが表示されます。

ヘッダーの UI を変更する

タブに追加したメニューのヘッダーのUIを変更するためには、パネルクラスの draw_header メソッドを定義します。 draw メソッドでは、ヘッダーのUIを変更できない点に注意が必要です。

# ヘッダーのカスタマイズ
def draw_header(self, context):
    layout = self.layout
    layout.label(text="", icon='PLUGIN')

# メニューの描画処理
def draw(self, context):
    pass

draw_header メソッドの引数は、以下の通りです。

引数 値の説明
self 呼びだされた draw_header メソッドを定義しているクラス オペレータクラスのインスタンス
context bpy_types.Context draw_header メソッド実行時のコンテキスト

draw_header メソッドでは、メニューのヘッダーに表示される文字列の左にアイコンを追加する処理を追加しています。

layout.label の引数を以下に示します。

引数 値の意味
text 表示する文字列
icon 表示するアイコン

本節のサンプルでは文字列を追加しないため、引数 text に空の文字列、引数 icon にプラグインのアイコンIDを指定しています。

メニューへ項目を追加する順番を制御する

2-1節 では、bpy.types.INFO_MT_mesh_add.append 関数を用いてメニューの末尾へ項目を追加していました。

本節のサンプルでは、bpy.types.VIEW3D_MT_object.prepend 関数を用いてメニューの先頭にも項目を追加しています。

# 項目をメニューの先頭に追加
bpy.types.VIEW3D_MT_object.append(menu_fn_1)
# 項目をメニューの末尾に追加
bpy.types.VIEW3D_MT_object.prepend(menu_fn_2)

まとめ

本節では、BlenderのUIをPythonから制御できることを確認しました。 また、[3Dビュー] エリアの []ツール・シェルフ] へタブを追加する方法について説明し、メニューへ項目を追加する方法を説明しました。

BlenderのUIを変更すると聞くと難しそうに思えますが、Pythonさえ理解できていればなんとかなりそうだと、ここまでの説明を読んだ方であれば思えてきたのではないでしょうか? なお、UIの説明を行っている 2-9節2-10節 の内容も一緒に理解すれば、Blenderで実現可能な大半のUIを自由に扱えるようになったと言ってよいと思います。

次節では、ボタンやメニューなどのUI部品を制御する方法について解説します。

ポイント